「積極的に学べ」:法政大学法学部教授 アンドレイ・クラフツェビチさん(66)
日露関係についての文献が並ぶ研究室だが、最近は専ら研究よりも授業に重きを置いている。
外見からは想像できないほど流暢な日本語、力強い語り口だ。単語が出てこないこともあるが、意見がはっきりとしているので意味は十分にくみ取れる。
大学ではロシア語と日露関係の講義を担当している。「日本人が何を考えているのか、理解するのは難しい」。先生は何事もはっきりと述べる。
20年以上住んでいても、「異文化」である日本人を理解できないことは多い。中でも納得できないのは、学生の質問の少なさだ。「私の日本語は完璧でない。絶対に分からない点があるはず」
先生は講義を必ず10分前に終わらせる。授業についての質問を受け付けるためで、海外の大学では常識だそうだ。しかし、日本の学生がしてくる質問はテストや成績に関するものばかりで、講義内容についての質問は少ない。
1949年、モスクワ生まれ。青年時代、驚くべき速さで経済成長を遂げる日本に興味を持った。大学でも日本経済を専攻した。しかし日本語の講義は文章読解が中心だった。そのため、夏休みにアルバイトで日本人観光客のガイドをし、会話力は自分で鍛えた。
そうした経験からか、今の学生にもゼミや授業への積極的な参加を呼びかける。求めるのはより多くのフィードバックと質問だ。「自分(先生)も意見を出しますが、これが全く正しいというわけではない」
厳しさも感じられるが、この姿勢は学生への信頼の裏返しなのかもしれない。「意見はあるはず」という言葉が重く耳に響いた。
※上記は2015年11月に取材した内容をテストを兼ねて再編集したものです。